10年ほど前に「空の巣症候群」という言葉を知った。
「空の巣症候群」とは、就職や進学・結婚などで子どもが独り立ちすることをきっかけに、言葉にできないような寂しさを感じること。
ふとした瞬間に涙が流れて止まらない、強い孤独感を感じて将来的に自分がなにをすべきか判断できないなど心の不調から、食欲不振、動悸、息切れ、倦怠感、頭痛など体の不調が現れることもある。
にぎやかだった家が静かになる様子が、ヒナが巣立った後の「空の巣」に似ていることから、そう名付けられたそう。
名付けた人、めっちゃセンスいいなぁ...と妙に感心したのを覚えている。
この言葉を知ったころは、バリバリ働きながら子育て真っ只中だったし、早く子育て終わってくれー!!と心の底から思っていたので「自分には全く関係ない」と思っていた。
それどころか、空の巣症候群になる人は生活の全てが”子供”になっている寂しい人なのではないか?などと思ったりした。
「子供の巣立ち」という、とても嬉しい出来事で寂しさなど湧くはずがないと信じて疑わなかった。
だがしかし、いざ我が子が進学によって家を出いくと、空の巣症候群になる人の気持ちが、少し分かるような気がした。
私は、訳もなく涙が出てしまったり、強い虚無感に襲われたりするまではないけれど...子育てが終わってしまった寂しさは時々感じている。
「もう!早く起きて!!遅刻するよ!」
「洗い物が終わった後にお弁当箱出すのやめてよ!」
「朝起きれなくなるからさっさと寝なさーい!」
当時はストレスに感じていた、こんなことさえも思い出すと懐かしく...もう2度とあの日々には戻れないんだなぁ...と胸がキュッとしたりする。
そして、そんな時にふと「おっ!エモいとはこういうことなのか...?」と思ったりもしている。
そんなほんのりとした寂しさを感じることがあるけれど、巣立った時はバンザーイと夫と祝杯をあげたし、よくよく考えると...もう子育ては無理...かも。
子育てにまつわるあれこれは、本当にメンドクサイくて大嫌いだった。
そして、子育てって楽しい嬉しいだけじゃなくて....苦しくて孤独なことも多かった。
そう考えると....過去の私、本当にお疲れ様!あなたのおかげで娘は巣立ち、私の子育ては終わったよ!と自分を抱きしめてあげたい気持ちになる。
私にとって子供が巣立ち空になった巣は「寂しさの象徴」ではなく「子育てをがんばった勲章」かもしれない。
もう親子3人で暮らすことはないだろうけど、夫の単身赴任が終わったら夫婦2人でゆっくりと暮らす....そして子が時々 ”経由地” として寄って行くであろう大切な私の巣。
だから、これからも大切に大切に守っていこうと思う。